「神の兵士」ができるまで(アメリカ福音派編): "Jesus Camp"
jesus camp trailer
「松嶋×町山 未公開映画祭」にて購入・鑑賞。ここで付けられていた邦題は「ジーザス・キャンプ 〜アメリカを動かすキリスト教原理主義〜」。字幕つき予告はこちらで。
アメリカでは自称「福音派」(Evangelist)という、創造説を支持し、聖書の内容を一字一句事実であると信じている一派が大きな政治的影響力を持った一派となっていることは有名な話だけれど、その一派が主催する子供向けのセミナーやキャンプの様子を映した作品。日本だと某学会くらいの影響力はあるのだろうけど、勝手に対比してなぞらえるのは危険かな。
その子供向けのセミナーの内容なのだけど、想像以上にタチの悪いカルトっぽい様相でほんとに怖い。トップにいるフィッシャー女史の喋りがこれまた巧く、言ってる内容はとても受け容れられないのにとても論理での説得ができる気がしない。セミナーの様子も見せる人に見せればそのまま勧誘ビデオになってしまいそうな勢いだ。怖い。親自身も当然どっぷりなわけで、子供がそのテクニックから逃れられるはずもない。23分間の奇跡の光景が頭をよぎる。
映画としては、この内容なら1時間以内に収められたのではという間延び感は否めない。基本的に啓蒙活動の内実を映し出すことに主眼を置いているので、たとえば他の主義主張を持った団体とどのようにぶつかっているのか、福音派ではない一般市民にとってどのような存在に見えているのか、そういった部分はあまり描かれない。そのあたりも多面的にまとめてくれていると、私のような国外の人間にはありがたかったのだけど。
ラスト、キャンプを終えた少年少女が路上で啓蒙活動をする。当然ながら足を止めてくれる人などなかなかいないわけだけど、その現実を前にして
「元々 クリスチャンなのかも」
と少女がポツリとつぶやく。一瞬微笑ましい光景のように見えるけれども、彼女の「世界」の中ではこれが最初に説得力をもった「解釈」なのだ。この、あまりにもズレてしまった認識をこれから自ら修正することは、とんでもなく難しい。この疑いを知らぬ目の子ども達の将来を考えると、暗澹たる気持ちになる。
唯一の救いは、この当時彼らに支持されていた共和党のヘッドがあのジョージ・W・ブッシュだったことくらいか。この映画が撮られた2006年以降、共和党勢力はガタ落ちという話で。なんだかなあ。