無風を待つ人の記録

風に流され生きてきた 風が止んでも生きていたい

アニメーションでチャップリン映画を蘇らせる試み / "The Illusionist (L'illusionniste)"


The Illusionist / L'illusionniste 2010 - Official Trailer


Harvard Exit Theatreにて鑑賞。
スクリーン数2のミニシアターで、建物は1925年築。その古き良き雰囲気を大切に残した内装が大変素敵な良い映画館だった。



そしてこの映画もまた古き良きチャップリン映画を現代で甦らせようとするかのようで、まさにこんな映画館でこそ上映されるために作られたんじゃないかという風情。劇場と作品が一体となって一つの映画世界を現出するというある種理想的な映画館体験を味わうことができたわけで、もうなんというかこれだけでバスで片道1時間かけて来た甲斐があったと思った。幸せ。


本作は「ベルヴィル・ランデブー (Les Triplettes de Belleville)」で一躍フレンチアニメーションのトップスターとなったシルヴァン・ショメが、ジャック・タチの遺稿となった脚本を元に制作した最新作。タチ自身のパントマイマー時代をベースにした半自伝的な脚本だったのか、主人公の奇術師の名前も "Tatischeff" とタチの本名に設定されている。*1
日本でもクロックワークス三鷹の森ジブリ美術館の配給が決まっているそうで、2011年中には公開される予定とのこと。(邦題は「ザ・イリュージョニスト<奇術師>」かな?)


前述のとおり、この作品を一行でまとめるなら、「バンドデシネとアニメーションの流儀でリメイクしたチャップリン映画」だと思っている。世界観にせよユーモア感覚にせよ鑑賞中ずっとそういう印象は持っていたし、あとで調べてみて気づいたのだけど、ストーリーもモロに「ライムライト」を意識してそうだ。

ショメはそういう元々チャップリン的な脚本を選び取った上で、「ベルヴィル・ランデブー」までで築いた自分の作風と一ミリもぶつかることなくここまでのクオリティに仕上げてきていて、それはもはや観客がこの監督に期待しているものを正確に把握して原作の選択から仕上げに至るまで完璧に制御された職人芸と言ってもいいような気がする。


内容についてはいろいろ感じたところあるけれど、とりあえず最後に主人公がヒロインに送ったメッセージが、考えれば考えるほどじんわり来てとても好き。


あ、あと最後に、不純な男性諸氏にもう一つ要注目ポイントを紹介しよう!
とあるシーンで、チェック柄スカートの「ぱんつはいてない」を体験できるゾ!!!
(別に嘘は書いてないので、何かを期待されて鑑賞された方(いるのか?)からの苦情は一切受け付けません。舞台背景を知ってる方ならすぐピンと来るでしょうけど。)

*1:ファーストネームは不明。