読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

無風を待つ人の記録

風に流され生きてきた 風が止んでも生きていたい

クエイ版「パノラマ島」: 「ピアノチューナー・オブ・アースクエイク

彼らの短編作品が好きで、かつテリー・ギリアムが製作総指揮ということでずっと観てみたかったんだけど、あまりそのへんでレンタルしてるような映画ではなくて、しばらく忘れていたところに会社の資料室で発見した。資料室マジ神。

で、期待を込めて観始めたのだけど、彼ら長編となるとあまり間が持たないんだなということがわかった。あらすじや結末からは乱歩の「パノラマ島綺譚」と「押絵と旅する男」を強く連想させるけれど、細部は正直初見では全然ついていけない難解さ。90分しかないのにすごい長く感じた。

とはいえ「異形の島」、「狂気の科学者」、「生身の人間から人間性を奪って自動人形にする恐怖と恍惚」、「破滅の音楽の演奏を企てる」、といった幻想ものの定番要素がぎっしりなので、好きな人はこの世界観に浸ってるだけで満足できるのは間違いない。

カットのひとつひとつは本当に美しい。陰翳ともやいだ色彩の非現実感が、ド耽美ではあるけれどクエイらしくて良い。地鳴りのような重低音と振動、といった彼らの常套表現も随所に出てくる。

マッドサイエンティストが住む島が舞台で、それが書き割りのような人工的な安っぽさをたぶん意図的に醸しているのも、「パノラマ島綺譚」や「モロー博士の島」を想起させる。島の外観はほとんど映らないけど、ラストカットはベックリンの「死の島」みたいだと思った。

とここまで書いて、後でDVDブックレットに入っていた監督インタビューを読んだらやっぱりベックリンを挙げてた。あと空の色がルネ・マグリットを意識してたのも推測通り。しかし島の書き割り感は別に意図的ではなく単なる予算の都合だったとのこと。全編デジタル撮影なのも予算の都合。監督、正直ですね・・