無風を待つ人の記録

風に流され生きてきた 風が止んでも生きていたい

「窃盗の罰として車に腕を轢かれるイランの少年」とされた写真がネット上で拡散し、反イスラム感情を煽った出来事について

2004年頃に起こった、とあるパフォーマーによる「車に腕を轢かせるふりをするストリートパフォーマンス」の写真が「窃盗の罰として車に腕を轢かれる8歳のイラン人少年」として主に英語圏のネット上に出回り、ネチズンたちの反イスラム感情を煽った顛末について。

日本でも最近Twitterを舞台としたデマRT拡散問題がよく取り沙汰されるというご時世でもあるし、少しここにまとめておこうと思う。

デマがどのように形成されるか、それが(この場合は民族感情という)バイアスの働きによって、一般的事実との矛盾があるにも関わらずどのように受け容れられ拡散したか、そしてそれが如何に訂正しがたく、何年もの間ネット上を流通し続けるか、そういったことがものすごく典型的に現れている事例だと思う。

基本的には海の向こうでの出来事だけれど、我々日本人にとって無縁なことではないのは今の風潮をご覧の通り。

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「ドニー・ダーコ」の名欝ソング "Mad World" の原曲+カバーたち


Donnie Darko - Mad World (covered by Gary Jules)


ロメロ作品をリメイクしたホラー映画「クレイジーズ」の予告編を観てたらこの曲が使われてて、鬱青春ミステリ映画の傑作「ドニー・ダーコ」の記憶がぱっと甦ってきた。
あの映画を観た方であれば全員耳に焼きついていることであろう名どんよりソング。

ドニー・ダーコ」は映画自体もすごかったけど、この曲もものすごいインパクトあったなあ。


こっちのバージョンしかご存知ない方が結構いるのではないかと思うのだけれど、これはカバー曲。オリジナルはTears For Fears



Tears For Fears - Mad World


なんかカバー界では人気の高い曲なのか、YouTubeにたくさん転がっていたので、少しリンクを集めてみた。んだけど。

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欲しいものは皆同じ、を再確認する: "Where in the World Is Osama Bin Laden?"


Where In The World Is Osama Bin Laden? Trailer


「松嶋×町山 未公開映画祭」にて購入・鑑賞。ここで付けられていた邦題は「ビン・ラディンを探せ! 〜スパーロックがテロ最前線に突撃!〜」。字幕つき予告はこちらで。
(字幕なしで良ければ、hulu.comに全編上がってるみたい)


スーパーサイズ・ミー」でおなじみ、ドキュメンタリー界の体当たり芸人ことモーガン・スパーロックが、米軍とCIAがいまだにビンラディンを見つけられていない状況に業を煮やし、それなら俺がビン・ラディンを見つけ出してやる!と単身アフガニスタンに乗り込む映画。


序盤はテンポ良くくだらないノリで観客をつかみ、上手にシリアスなテーマを噛み砕いて織りまぜながら自説につなげていく作りは「スーパー・サイズ・ミー」から変わっていない。二次大戦以降の米国と中東の外交関係の歩みも簡単におさらいしてくれるので、あまり背景を知らない人にも勉強になる。(もちろんスパーロック流におもしろおかしくされているので、そのまま鵜呑みにせずにあとで勉強しなおしたほうがいいけれど)

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「神の兵士」ができるまで(アメリカ福音派編): "Jesus Camp"


jesus camp trailer


「松嶋×町山 未公開映画祭」にて購入・鑑賞。ここで付けられていた邦題は「ジーザス・キャンプ 〜アメリカを動かすキリスト教原理主義〜」。字幕つき予告はこちらで。


アメリカでは自称「福音派」(Evangelist)という、創造説を支持し、聖書の内容を一字一句事実であると信じている一派が大きな政治的影響力を持った一派となっていることは有名な話だけれど、その一派が主催する子供向けのセミナーやキャンプの様子を映した作品。日本だと某学会くらいの影響力はあるのだろうけど、勝手に対比してなぞらえるのは危険かな。


その子供向けのセミナーの内容なのだけど、想像以上にタチの悪いカルトっぽい様相でほんとに怖い。トップにいるフィッシャー女史の喋りがこれまた巧く、言ってる内容はとても受け容れられないのにとても論理での説得ができる気がしない。セミナーの様子も見せる人に見せればそのまま勧誘ビデオになってしまいそうな勢いだ。怖い。親自身も当然どっぷりなわけで、子供がそのテクニックから逃れられるはずもない。23分間の奇跡の光景が頭をよぎる。

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